2016/04/01 12:14:02 テーマ:議会
平成24年(2012年)9月定例会(一般質問)
【主な質問テーマ】
〇日本再生デザインについて
〇原子力災害にかかわる広域避難計画について
〇若年無業者対策について
〇社会人の職業教育について
〇県有施設管理について
1.日本再生デザインについて
(かもと)
まず最初に、全国知事会の日本再生デザインについて伺います。
全国知事会の日本グランドデザイン構想会議から、人口減少社会の到来や少子高齢化、経済、社会のグローバル化への対応、東日本大震災などの災害に対する危機管理の要請などに対応するため、日本国の将来の方向性、次世代に向けた新しい成長モデルについて明確なビジョンを描き、日本の再生につなげていくべきという発想をもとに、日本再生デザインが策定されることになり、中間報告がことし7月19日に発表されました。全国知事会が発表する日本再生デザインは、地方の総意といってもよいものであり、その重要性は大きく、島根県もその一員として、日本国の将来の方向性、次世代に向けた新しい成長モデルについて何らかの役割があり、島根県にとっても大変重要な日本再生デザインだと考えます。
同デザインの目的及び骨子は何か伺います。
戦後、日本は東京一極集中と中央集権などにより、世界が羨望する経済成長を遂げました。しかし、所得倍増計画を掲げる政府のもとで策定された第1次全国総合開発計画に代表される日本の国土開発計画の実行は、国主導の工業化などの効率と引きかえに、国内に公害や地方の過疎化を引き起こし、災害などのリスクに対する脆弱性などを抱える結果となったことも否定できません。そうした意味で、地方の発想を国に対して提言するということは、大変意味のあることと考えます。
しかし、その一方で、このようなデザインを実現するには、財源を国と地方でどのように配分するかということだけでなく、新たな財源をどのように見つけるかということに踏み込まざるを得ないと考えます。どのようにお考えか知事に伺います。
さらに、同デザインには具体的な施策として、現行総合特区制度を大胆に見直し、規制緩和等の範囲を拡大し、国の関与を最小限にしたスーパー総合特区、英語教育を始め、子どもの可能性を最大限に引き出し、才能や個性を伸ばす教育制度や人材育成システムを構築する、また日本で活躍する優秀な外国人留学生や研究者の戦略的な獲得や育成などを掲げるグローバル、グローカル人材、高度専門人材の育成、国土を貫く複数の軸を形成し、地域間ネットワークを確立しつつ、日本全体の活力を創出することができるよう、多様で成長、発展が期待できる経済的、人的な交流が行われる大交流圏、日本海沿岸道路早期整備と太平洋側への横断軸の整備、日本海側港湾のハブ化、広域的なエネルギー供給拠点である日本海側基地及びガスパイプライン網、首都機能のバックアップエリアの設定などが挙がっております。
島根県は、こうした施策に沿って何をし、どのような役割を担い、どのように発展していく姿を描いておられるのか、知事にお伺いいたします。
(知事)
嘉本議員の御質問にお答えを申し上げます。
私への最初の質問は、全国知事会が行っております日本再生デザイン構想と申しますか、その目的及び骨子についてであります。
日本再生デザインという構想は、非常に長期的な視点に立ちまして、いろんな角度から日本の将来の国づくりをどういうふうな方向に持っていったらいいのか。あるいは、そのために留意をしなければいけない問題としてどういうものがあるのか。あるいは、注意をしなければいけない点、いろいろな意見やアイデアを出し合って、それを包括的にまとめまして、一つの課題集と申しますか、あるいは構想集と申しますか、そういうものを整理をし、今後、具体的な例えば予算でありますとか、あるいは中期的な計画をつくるような場合に参考になるように、また政府にも地方の立場としてこういう視点が必要ですよとか、あるいはこういう点に留意してもらいたいというようなことを伝えると、こういう意味があるもんでございます。
こうした背景には、日本の経済社会の変化というものがあります。少子高齢化、人口の減少が進む、そういう中で、一極集中が進んでおると。他方で、東日本大震災によりまして、一極集中がもたらす脆弱性、あるいは太平洋側にやや偏してきた戦後の発展、そういうものでいいのかどうか。日本海軸といったようなものを考えなきゃいかんのじゃないか。そういう中で、さらに国際情勢の変化というのがあるわけです。東アジアにおける政治情勢の変化、あるいは中国等後発国の高度成長、発展、そういう中で、日本がどういうふうな対応をとったらいいのか。あるいは、エネルギー需給も変化をするわけであります。そうした現在起こっている変化、あるいは将来にも起こる変化をある程度頭に描きまして、大きな方針といいますか、留意しなきゃいかん点を整理をすると。それで一定のデザインをするということに意味があるというふうに考えておりますが、目的としては、3つの提言をしております。
1つは、地方自治体が地域の多様性と創意工夫ができるよう、新たな地方自治制度を確立をするということ。それから、各地にあります地域資源を生かした多極型産業構造を構築し、国土全体で交流ができるような交流圏を形成する。それから、3番目には、アジアを見据えた成長戦略。あるいは、太平洋ベルト軸の代替機能、そういう観点から、新たな国土を構築する。そういう中に、国土軸の複線化でありますとか、あるいはそういう中に、例えば日本海側の港湾のハブ化でありますとか、高速道路のミッシングリンクの解消でありますとか、あるいは首都圏機能、太平洋ベルトの防災強化とそのバックアップの強化と、こういったことが書かれておるわけであります。
そこで、議員の次の質問は、そうしたものを実現するためには、新たな財源をどういうふうに見つけるのかということについての御質問であります。
先ほど申し上げましたように、再生デザインはグランド構想といいますか、いろいろ留意しなきゃいかん点を、必要だと考えられるものを並べておるわけでありまして、総合的なコスト計算をして積み上げるというようなことじゃないわけであります。それはこれからのことになるでしょうね。遠い目的がありまして、中期的な展望があって、ほいで毎年の予算だとかがあると。中期的な展望をするときには、ある程度優先順位をつけたり、あるいはそれに伴って事業量がどういうものになるか。やり方によっていろいろ違ってきますし、そうすると財源の確保が可能なのか。そういう検討と同時に、日本全体として生産の能力というのは限られてますから、そういう中で、どういうものが可能なのかというチェックもしなきゃいかん。そういう意味で、財源をどうするかというのは、いずれにしても具体化をする過程で検討すべきことだろうと。そうしないと、なかなか集束した推測といいますか、予測というのは難しいというふうに思います。
次の質問は、そうした日本再生デザインの中に具体的な施策の方向も示されておるけども、県としてはどういうような役割を演ずるのかということであります。
例えば、具体的な施策としては、世界経済のグローバル化に伴いまして、グローカルな、グローバルでありローカルな人材の育成をする。これは我々も毎年の予算でありますとか、日々の教育の活動を通じて引き続きやっていく必要があるということであります。
あるいは、国土の複数軸ということになりますと、これは例えば日本海軸ですと、山陰道の早期建設というのも日本海側の軸の一つです。そういうものも実際のプロセスで早く進むように国に要請をする。あるいは、太平洋側への横断道路というのもありますけども、これは例えば松江尾道線のようなものを早く実現をする。
あるいは、首都圏のバックアップ機能ということになりますと、いろんな防災対策を行う、あるいは防災資機材の拠点などを地方で持つ。そういう具体的な予算なり、あるいは計画の実施の過程で役割を果たしていくと。同時に、こういう構想をつくるときにやはり大事なことは、大都市集中が進み、大都市が非常に住みにくくなってる。災害などに非常に脆弱な構造になっている。そういう意味で、私どもは地方分散を図るべきだという主張をしておるわけでありますが、分散を図るように、こういう大構想の中でもいろんな提言をしていくと、こういう役割もあろうというふうに思っているとこであります。
(かもと)
全国知事会の日本再生デザインについて、知事は、長期的な国づくりだと、それぞれの日本国の課題集であり、それをさまざまな環境の中でどうやって国として整理すべきかというようなことについての枠組みを提示するんだということだと思います。ただ、私が考えますに、やはり今、国と地方というのは対等関係にあるということに鑑みれば、お互い、これから恐らく10年ぐらいのタイムスパンで、これからの金融政策とか、あるいは成長戦略、GDPあるいはお金を外国から国に持ってくるということについてどういうふうな考え方でもってやっていくのかということについて、国では議論はされてると思いますけれども、やはり地方もそれの影響を受けるわけですから、やはりそれなりの覚悟を持って、地方から財政の担保をどういうふうにしていくのかということについて、金融政策とか、あるいは経済成長戦略なんかも含めて、踏み込んでやっていかなきゃならないんじゃないかなというふうに思っております。
そういう中で、知事さん、財政の専門家でもございます。そういった立場から、ぜひ私としては、全国に島根に溝口ありと、日本国はこうあるべきだというものをぜひ示していただきたいというふうに、私としては思っております。何かコメントがありますれば、お願いしたいというふうに思っとります。
(知事)
嘉本議員の御質問は、国と地方との関係についてであります。
今回やっております全国知事会の課題は、1つは一番上の目標には、国と地方という自治体ですね。そういう関係について、さらに自治体でいろんな決断ができるようにしてほしいということがあるわけであります。もう一つ、地方といった場合に、大都市部の地方と地方部の地方というのがありまして、これは何ですか、いろんな面で立場が違うんですね。例えば、交付税をどういうふうに充実していくかという場合に、地方税で充実したほうがいいというのは大都市部の主張になります。あるいは、例えば道路とか社会インフラの整備なんかにおいて、整備が進んだ大都市のほうは、もう自分たちでやるから、大体任せてほしいという主張になるんです。しかし、高速道路なんていうのは、大都市部から順次、国の直轄事業として行われているわけです。そうすると、島根などは、そういうのが順番がおくれるわけです。そうすると、そういうおくれてる立場から主張するというのは、また違う、全国知事会というよりも、おくれた地方が集まって政府に対して要望すると、こういうことがあるわけです。それは、高速道路なんかですと、島根県とか10県でございましたか、おくれてるところがまとまりまして、国に対して早くミッシングリンクを解消してほしいという活動をやってるわけです。それは、私どもも一緒になってやってると。
あるいは、過疎連というのがあります。これは、過疎地域が集まって、国に対して過疎採択を実施をする。過疎法の延長なんか、かつてはもう要らないんじゃないかといった議論も随分ありますけども、地方部は議会とも一緒になって要請をし、延長されると。こういう田舎という言葉じゃちょっと変なんですけども、発展のおくれた、あるいは整備のおくれた地方、その活動をいろいろやってるわけです。例えば、それはなぜ起こったかといいますと、やはり戦後の発展が大都市中心で、地方の整備がおくれたということに関連してますから、私どもは、地方分散進めるべきだという主張をしているわけです。それは、私もそういう冊子をつくっていろいろ発信をしておりますが、その延長線上として、ふるさと知事ネットワークというのをつくったわけです。これ福井県と一緒になってつくったわけですけども、そういう地方の整備のおくれたところが発展できるような地方税制を導入してほしいと、そういう要望も近年、最近もやっとりますけども、そういう活動を通じてやるということでございます。
それから、もう一つの地方は、地域としての地方です。例えば日本海側で、あるいは山陰道の建設のようなことでありますと、日本海側の山陰3県が一緒になってやる。あるいは、山陰、日本海側の国土軸ということになると、青森から山陰のほうまでが一緒になって行動する。物によっていろいろあるわけでありまして、私の見方では、全国知事会はやっぱり利害が違いますから、そういう問題はなかなか一致することは難しゅうございます。今回のグランドデザインは、そういう意味で、各地の必要と考えるものが大体入ってるというようなことでもあるわけであります。それは一つの構想でありますから、今後、中期的、あるいは短期的な政策形成の過程で取捨選択をされていくと、こういうように考えているところであります。
(かもと)
ありがとうございました。
島根県にとって、高速道って大切でございます。ミッシングリンクをできるだけ早く解消していくこと、あるいは災害対策についてしっかりと財政を担保してもらうように国に対して要望していくことというのが大事なことだと思っております。その辺はいいと思います。ただ、今回、先ほど総花的な話だというようなこと、印象を受けました。ただそれではなかなか説得力のある提言というふうには、デザインというふうには、僕はならないというふうに思っております。そういった矛盾を抱えながらも、今、恐らくこの10年、これからそういった議論、どうやってお金を捻出していくのか、あるいは経済成長していくのかということについて非常に大きな議論があろうかと思います。やはり地方として一定の見識、これをぜひこの場で示していただきたいと、私のほうからはお願いでございます。以上でございます。
2.原子力災害にかかわる広域避難計画について
(かもと)
次に、原子力災害にかかわる広域避難計画について伺います。
平成24年8月28日現在の国の緊急災害対策本部の発表によれば、昨年3月11日に発生した東日本大震災により、死者1万5,868名、行方不明者2,847名、避難所のほか、親族、知人宅や公営住宅、仮設住宅等への入居者も含んだ全国の避難者数は34万3,334名に上るということでございます。
建築物被害も、全壊12万9,340戸、半壊26万4,035戸、一部破損72万6,089戸という大変悲惨な被害状況でございます。東日本大震災の復旧、復興、原子力発電所事故対策の戦いは緒についたばかりであります。
国におけるエネルギー政策、防災指針等の改正、原子力発電所の安全基準などはいまだに不透明でありますが、その中で、万が一にも原子力災害が起こったときの対応策は講じておかなければなりません。地域でできることは地域でどんどん進めていく必要がございます。
その中で、佐賀県においては、昨年11月20日に、県、玄海町、唐津市、伊万里市の主催で平成23年度佐賀県原子力防災訓練が実施されました。訓練には、国、関係自治体、消防、警察、自衛隊、海上本部、医療機関など80機関と、一般住民の皆さんを合わせて約3万2,500人が参加されたそうでございます。
同訓練は、福島第一原子力発電所の事故の教訓をもとに8月に策定された佐賀県原子力災害暫定行動計画に基づき、実施されました。発電所から20キロメートル圏内の住民の方の、発電所から30キロメートル圏外への避難を始めとして、県内全域での緊急時モニタリング訓練、車両除染訓練、離島避難訓練、市役所、町役場の機能確保訓練、玄海原子力発電所での緊急時対策訓練などの新たな訓練を実施し、より実際の災害を想定し、動く訓練が重視されたものとなったということでございます。
ことしの佐賀県における10月28日の原子力災害防災訓練は、防災業務関係者の防災対策に対する習熟及び防災関係機関相互の連携協力体制の強化、並びに地域住民の原子力防災意識の向上を図ることを目的に実施される予定でございます。
その内容は、1、福岡県、長崎県職員の佐賀県への派遣による情報収集伝達訓練も含めた佐賀県庁、県内全市役所、町役場における緊急時通報連絡訓練。2、玄海町、唐津市、伊万里市の住民避難訓練。3、玄海原子力発電所周辺、県内市役所、町役場等県内全域の緊急時モニタリング訓練。4、唐津市、佐賀市などの病院による緊急被曝医療訓練。5、4つの小学校、1つの公民館における避難所設置、運営訓練。6、玄海原子力発電所における緊急安全対策訓練によって構成されています。
特に、広域の避難訓練については、1、原子力発電所から20キロメートル圏内の住民の30キロ圏外への避難訓練。2、玄海町内における4小中学校、唐津市内にある小学校の児童の避難訓練。3、福祉施設の入所者の要援護者避難訓練。4、玄海町内にある2つの保育所の園児の避難訓練が実施される予定であります。
ことしもより実際の災害を想定し、体を動かす訓練が重視されたものになることが予想されます。
そこで、伺います。
県民の安全で効率的な実効性のある避難が行えるように、島根県の広域避難計画ではどのような点に留意しているか伺います。
この質問につきましては、先日、岩田議員により質問もございましたが、できるだけ重複は避けていただきながらも、具体的な御答弁をいただけたらと思います。
(知事)
次は、原発事故等に関連をいたしまして、県が万一の場合の広域避難計画をつくってありますけども、それについての留意点、どういうことを留意しているのか御質問がありました。
議員も御指摘になりましたが、昨日、岩田議員の御質問の中でもお答え申し上げましたが、1つは、万が一の場合には、UPZ30キロ圏内、島根県ですと40万人ぐらいの方々が暮らしておられますが、そういう方々が被害を受けないように避難をされる。その避難先を確保する。それにつきましては、まず避難される方々の地域ごとに、例えば公民館単位で、この公民館の地区にお住まいの方々は、例えば県内の西のほうのこういう施設に避難をするということを想定をしておる。あるいは、広島県のこういう施設に行くと。そういう計画をつくるということがあります。それから、病院におられるとか、介護施設におられる要援護者の避難につきましては、比較的生活環境の整った避難場所を確保するとか、そういった配慮もしなければならない。そうしたことで、避難先の自治体につきまして、万が一の場合はこの施設を活用させていただきますという、今話し合いを行っておりまして、一定の了解を取りつけておくということでございます。
それから、避難ルートにつきましては、県警本部が中心となりまして、交通規制、誘導体制を整えるということを計画に織り込む予定であります。
さらに、万が一の場合に、関係のある住民の方々にどのような手段で避難のお知らせをするか。あるいは、どのような行動をとるべきか。事前に一定の理解をしていただくように、広報したり、訓練をする。これが大事な点であります。
そうした点、ほかにもいろいろありますけども、万が一の場合に備えまして、住民の方々が安全かつ迅速に避難できるように、具体的な避難先などを織り込んだ広域避難計画がこの秋にも一定の形となるよう作業を進めておるところであります。この作業はここで終わりということにはなりませんで、その後もさらに詳細な取り決めをするとか、詰めをするとか、いろんなことを続けたいとは思っております。
そういう中で、議員が御指摘になった点で大事なことは、計画に基づいた避難の訓練をするということでございます。
本年の2月には、原子力防災訓練におきましては、松江市だけではなくて、周辺の鳥取県、あるいは出雲、雲南、安来市等、それから鳥取県の境港、米子市などとも一緒になりまして、県、市、警察、消防など防災機関の初動対応の訓練をしました。これは行政だけの訓練であります。その段階では、そういうことをまずやる必要があったということでありますが、来年の1月には、行政だけでなく、住民の方々にも参加いただく実動訓練を実施をしようということで準備中であります。こうした訓練を繰り返し実施して、実効性のある防災体制の確立に努めていきたい、こういうふうに考えておるところであります。以上であります。
3.若年無業者対策について
(かもと)
続いて、若年無業者対策について伺います。
文部科学省が先月8月27日に発表した平成24年度学校基本調査の速報値によれば、大学を今春卒業した人の就職率は2年連続で上昇しているものの、就職者のうち正規の職員等でない者、一時的な仕事についた者及び進学も就職もしていない者を合算すると12万8,000人となり、安定的な雇用についていない者の卒業者に占める割合は22.9%になるということであります。さらに、大学を今春卒業した約56万人のうち6%に当たる約3万3,000人が進学も就職の準備もしていないということであります。この中には、家事手伝いやボランティア従事者なども含まれるということでございますが、いわゆるニートが大半を占めると見られているそうであります。
ニートとは、若年無業者のことを指し、通学も仕事もしておらず、職業訓練も受けていない15から34歳の若者を指す言葉であります。心に課題や悩みを抱え、働くための一歩が踏み出せない。人間関係につまずき、働く自信がない。仕事が続かず、すぐやめてしまう。また、自分らしい働き方を見つけたいというような欲求など、さまざまな原因で職につくことのできない人たちのことを指すということでございます。
また、中学校生や高校生、大学生の段階でひきこもりなど心に課題を持ち、社会との関係をうまく保つことができずに就職できない人たちもおられます。
1日の3分の1を占める仕事のありようは、個人が充実した人生を送るために大変重要であります。
平成24年度の厚生労働白書の中に、社会的排除と社会的包摂の概念を紹介するコラムがありました。それによると、社会的排除という概念は、従来の貧困の考え方をより革新し、資源の不足そのものだけを問題視するのではなく、その資源の不足をきっかけに、徐々に社会における仕組みから脱落し、人間関係が希薄になり、社会の一員としての存在価値を奪われていくことを問題視するものでございます。社会の中心から外へ外へと追い出され、社会の周縁に押しやられるという意味だそうであります。多くの人々は、家庭、地域社会、または企業が提供する労働市場のそれぞれ、もしくはいずれかに自分の居場所と役割を見出すことで社会生活に参加し、お互いの存在意義を認め合い尊重する中で自立して生活しています。ところが、近年、社会的つながりの希薄化を背景に、社会に居場所と役割がなく、貧困や失業といった生活上の困難に遭遇した場合に、社会との接触が途絶え、その後も社会から隔絶された状態に陥りやすいという問題を生んでいるということでございます。
一方、社会的包摂は、社会的排除の解消をあらわす言葉であり、貧困や失業などさまざまな事情を背景に、社会から結果的に排除されている人々の他者とのつながりを回復し、社会の相互的な関係性の中に引き入れていくという考え方だそうでございます。また、社会的包摂政策をいち早く打ち出したEU諸国において、社会的包摂を促す政策の最大の柱は雇用政策だと考えられているそうでございますが、その理由として、EU諸国では、現代社会において個人が他者とのつながり、自分の価値を発揮する最たる手段が就労だと理解されているからということであります。
働くことというのは、単に賃金をもらうための手段というだけではなく、働くことによって、人は社会から存在意義を認められ、役割が与えられている。働くことは社会から承認されることなのだということであります。失業しているということは、その機会を奪われることであり、失業自体がたとえ生活に何の影響を及ぼさなくても、社会問題であると認識されているということであります。
また、安定的な生活を営むためには一定の所得がなければならないというのも事実であります。個人にとって仕事は人生の中で大変重要な位置を占めます。さらに、社会にとっても仕事についていない人が労働力として生産的な活動に加わることは、労働力人口が減少し、そしてこのままでは大幅な人口減少が将来予想される中で、大変重要なことであります。
加えて、就職の問題は、仕事をしない期間が長くなればなるほど職探しが難しくなる傾向があり、生活保護の必要性など、社会的なコストの問題も出てまいります。ほかにも、国内総生産に寄与するというような一面もあると思います。
若年無業者ができるだけ早い段階で就職できる環境整備をすることが、個人の幸せと社会への貢献を両立させることにつながると思います。
そこでまず、全国及び島根県の若年無業者数はどのように推移しているか伺います。
(商工労働部長)
まず、全国及び島根県の若年無業者数の推移についてでございます。
総務省の労働力調査によりますと、若年無業者の数は全国で、平成14年以降、60万人から大体64万人程度で推移をいたしております。一方、都道府県別の数値ですが、労働力調査では出されておりませんけども、総務省が5年に1回行っております就業構造基本調査をもとに作成をした資料によりますと、島根県内の若年無業者数は、ちょっと5年ごとで調査が古くなりますけども、平成14年が3,800人、直近の平成19年が2,600人というふうになっております。
(かもと)
第2に、こうした働くための一歩が踏み出せない、人間関係につまずき働く自信がない、仕事が続かず、すぐやめてしまう、自分らしい働き方を見つけたいというような若年無業者に対する就職支援を、島根県では地域若者サポートステーションで実施しておられますが、その就職支援の実施状況と支援実績、評価について伺います。
(商工労働部長)
次に、サポートステーションによります就職支援の実施状況、実績評価についてでございます。
県では、国と連携いたしまして、若年無業者の方々の職業的自立を促進するため、しまね若者サポートステーションを平成21年度に松江市、23年度には浜田市に設置し、NPO法人に委託して運営をいたしております。サポートステーションでは、本人やその家族などを対象としたカウンセリングや就労支援セミナー、就労体験など、個々の状況に応じた多様なプログラムを用意し、就労や就学に向けた支援を個別的、継続的に実施しています。特に、相談業務については、窓口相談だけではなく、相談者の自宅や学校等への訪問支援のほか、県内各地へ出かけて相談に応じる出張相談を、益田市や隠岐の島町など15市町で開催いたしております。平成21年度の開設から本年7月末までの間に、電話や訪問も含めて、約7,500件の相談を受け、延べ663人に対して支援を行っています。
こうした取り組みの結果、就職等の進路が決定した人は、平成21年度で33人、平成22年度で80人、平成23年度で94人と、おかげさまで年々増加いたしております。引き続き、若年無業者の就労に努力したいと思いますし、一定の成果を上げているというふうに思っております。
(かもと)
先ほど、就職の問題は仕事をしない期間が長くなるほど職探しが難しくなる傾向があると申しましたが、私が地域で就職支援などをしておられるNPOの方にヒアリングした中では、若年無業者数の推移がどうというよりも、就職や悩みの相談に来られた人の中で、特に長い間職につけない人の割合がふえており、とどまり感があるとおっしゃっておられました。こうした層の人たちに対して対応が急がれますし、相談のために接触をされた若年無業者の早期就職に向けて対応が必要です。
地域若者サポートステーションでの就職支援のプロセスにおいては、若年無業者からの電話、メール、ファクスなどによる問い合わせや相談から始まり、本人のサポートステーションへの来所による相談や、サポートステーションの職員からの訪問相談、その後の段階として、心の相談と進路の相談という主に2つの個別相談を経て、個別のケースにより、状況に応じて専門的な機関、団体を紹介したり、職業意識の啓発、意欲や自信の醸成、気づきを促す自立支援プログラムを実施しておられます。
実施に当たっては、商工労働部内だけではなく、心理相談や生活環境改善などにおいて他部局との連携、実際に就職支援を委託しているNPO法人など関連機関とのきめ細やかな連携や、それらへの支援が必要と考えますが、どのように考えておられるか伺います。
(商工労働部長)
次に、就労支援に当たっての他部局との連携、委託先NPO法人など関連機関との連携、支援についてでございます。
しまね若者サポートステーションでは、国、県、市町村の保健、福祉、労働、教育分野に関係する機関と委託先NPO法人を構成員とするしまね若者サポートステーション連絡会議を年2回開催いたしております。その会議では、各機関が支援している事例の研究などを通じまして、連携を深め、それぞれの就職支援に生かしているところでございます。
また、サポートステーションと関連機関が連携し、それぞれの機能を生かして相談者をお互いに紹介したり、紹介後のフォローを継続して行うなど、今後も各機関が協力して支援を実施してまいります。
委託先のNPO法人への支援につきましては、国の交付金を活用した若者が抱える課題解決のための先駆的取り組みに対する助成制度というのを活用いたしまして、健康福祉部が実施いたしております。
今後も関連機関との連携、支援体制のもと、若年無業者に対する就労を支援していきたいというふうに考えております。
(かもと)
若年無業者対策は非常に難しい問題だと思います。個別にお話を伺っておりますと、なかなかそう簡単にはいかない。だからこそ、部局との連携、あるいはNPOさんとの連携が必要になってくる。私は、県という立場ではあるけれども、基本的に一人一人御相談に来られた方がどういうてんまつをたどっておられるのかということについて、しっかりフォローしていく。少なくともそれをきちんと把握していくということが重要だというふうに思っております。これは私の意見ということで述べさせていただきたいというふうに思います。
4.社会人の職業教育について
(かもと)
次に、前回の6月定例会に引き続き、社会人の職業教育について伺います。
島根県にとって、産業振興による雇用創出は喫緊の課題であります。島根県の産業振興を進めるための大きな課題は人材育成であります。誘致企業も県内の既存の企業も、事業拡大、新事業創出、異業種へ進出などしていくためには、何よりもそれらを担う人、特に企業の中核を担う人、人材、幹部候補者の育成が重要であると考えます。
幹部候補生の育成手法の一つとして、経営をより実践的に、しかも数理科学的な見地から学ぶ手法がございます。日本の大学ではそうした手法を学ぶ場として、学部レベルでは経営学部、修士レベルでは経営大学院がありますが、島根県内には経営学部、経営大学院を抱える高等教育機関が存在しません。島根県と鳥取県の人口の中心は、宍道湖、中海圏域であり、そこに立地する島根大学が経営に関する専門教育を担うに適任であると考えます。こうした人材育成の恩恵は、製造業、建設業、小売業、金融業、サービス業などの中小大企業に限りません。農業経営者、病院経営者、行政職員、団体職員などに至るまで広範囲に及びます。
島根大学と経済界、行政が連携し合い、企業などの幹部候補者を育成するための講座の開設、ひいては、専門職大学院の創設といった教育環境を整備することが、島根県経済、山陰経済の発展、構造転換、雇用の増加、地域の発展に貢献すると考えます。
県が中心となって、島根大学や経済界と連携し、その体制づくり、具体的な事業構築を進めていく必要があると考えますし、前回6月定例会で、知事からは、経済界の方々の意見なども聞きながら、島根大学とも工夫の余地がないかさらに検討したいとの答弁でございました。その進捗を伺います。
また、講座の開設や専門職大学院の開設についてでございます。
このことについて、島根大学への意向調査及び地域経済界、行政、各団体へのニーズ調査を行う意向はないか、伺います。
(商工労働部長)
島根大学への経営に関する講座の開設と専門大学院の創設についての進捗、島根大学への意向調査や経済界とのニーズの調査についてということについて、2点合わせてお答えをいたします。
ことしの7月、県内の経済団体や企業によって、NPO法人しまね未来創造が設立されました。この法人がこのたび島根大学の協力を得まして、学生や企業の若手人材の育成を目的とした中小企業経営に関する寄附講座、実例中小企業経営論を来月の10月から開講することになりました。学生や企業の幹部、社員が15回にわたりまして、島根県の中小企業の魅力、財務や経営戦略などを専門家や企業経営者から学ぶことになっています。県もこの講座の開設に当たりまして、講師の派遣や学生と企業との交流などの橋渡しなどで支援することにいたしております。
議員お尋ねの島根大学による社会人の職業教育、例えば企業の幹部候補生の育成を目的とした講座の開設や専門大学院の創設につきましては、このたびの中小企業経営に関する講座の成果、例えば企業の人材育成に役立ったとか、講義の内容、レベルはよかったのかということなどをまとめまして、その後、経済界や島根大学などの御意見、そしてニーズなどについても伺っていきたいというふうに考えております。
5.県有施設管理について
(かもと)
最後に、前回に引き続き、県有施設管理について伺います。
平成22年度末の島根県の知事部局、教育委員会、警察の県有施設は753施設、棟数でいうと4,528棟、延べ床面積は約180万平方メートルということでございます。私たちの身近な施設である島根県立美術館の延べ床面積に換算しますと、約145個分の膨大な施設を管理していることになります。
島根県の財政状況が厳しく、県民人口が減少する中で、先ほどの膨大な量の県有施設の老朽化が進んでおり、施設の長寿命化や維持管理費のコスト削減などを進めながら、行政サービスの向上、環境負荷の軽減に努めていかなければなりません。できる限り少ない経費で最適な施設の経営管理を行わなければなりません。
そこで、まず大事になるのが、データベースづくりであります。施設で使用している日々の電気、ガス、水道の使用量等やふぐあい情報、施設の土地、建物等の基本的な情報、利用状況、施設の劣化や保全に関する情報、施設を構成する建築、附帯施設、電気機械設備に関する工事時期、内容、費用などの施設ごとのデータベースをつくっていくことが重要です。このデータベースをもとに、施設の中長期的な視点に立った改修、改築計画などの予防保全による長寿命化、施設の適切な利活用あるいは売却、維持管理費の日常管理、他施設との比較によるコスト軽減、業務改善を図ることができます。
データベース化につきましては、ことし2月の定例会において、知事部局、教育委員会、警察本部からそれぞれ前向きな御答弁をいただきましたが、それぞれのデータベース作成の進捗状況を伺います。
さらに、財政状況の厳しい状況においては、県の不要資産をできるだけ少なくし、かつ有効に活用することが必要です。今後、地域の市町村、国の庁舎施設などとの相互利活用も課題になってくると考えます。
例えば、青森県では、平成18年5月、県有施設の有効活用を図るため、庁舎等の県有施設の利活用及び利用調整の検討を行う県有施設利活用調整会議を設置されていますが、その後、平成19年6月、県有施設利活用調整会議と県有地の利活用の調整を行っていた県有地利活用調整会議を統合し、県有施設と県有地を一括して全庁横断的に利活用、検討するための各部局、教育委員会、警察本部の担当課長を委員とする県有不動産利活用推進会議を設置されています。その中で、土地、建物情報の共有を始め、統廃合施設、遊休施設、民間借り上げ事務所及び空きスペース等のある単独庁舎等について、出先機関の集約、複合化等による利活用及び共同利用の調整を図り、市町村と意思疎通を定期的に図りながら、市町村への施設を売却、譲渡されているケースもあるそうでございます。
島根県においては、庁舎施設の利用状況について調査をしているか伺います。
このような調査の必要性について、どのように考えておられるのか。今後の調査の意向も含めてお伺いいたします。
(総務部長)
私のほうからは、施設管理につきまして、2点御質問がございましたので、お答えをさせていただきます。
まず1点目でございますが、知事部局におけるデータベース作成の進捗状況ということでございます。
2月定例議会におきまして、県営住宅及び職員宿舎を除きます知事部局全ての施設、約1,200棟ございますが、これらにつきまして、財団法人建築保全センター所有の保全情報システムというものを活用して、竣工年、構造、床面積などの建物の基本情報、あるいは自家発電装置でありますとか、エレベーターなどの主要設備の機器、またエネルギーの使用量などのデータ入力を本年度中に終えたいというふうにお答えをしたところでございます。
現在の進捗状況でございますが、建物の基本情報及び主要設備機器のデータについては入力を完了をしておるところでございます。残りの項目につきまして、本年度末までの入力の終了を目指しまして、現在、鋭意作業を進めておるというふうな状況になってございます。
2点目でございますが、庁舎等の利用状況などの把握についての御質問にお答えをいたします。
土地、施設が不要となった場合でございますが、このような場合につきましては、知事部局、教育長及び警察本部で構成をしております県有財産有効活用検討委員会というところにおきまして、県内部でのまず利活用を検討すると。その後に、国でありますとか、市町村へ利用の有無について照会を行い、さらにその後、売却を検討するというふうな手順になっておるところでございます。しかしながら、施設、土地が全部不要になったという場合ではなしに、施設内において利用しない部屋ができるなど、一定の空きスペースが一定期間生じるような場合につきましては、一元的に情報を把握をしていないというような状態になってございます。
今後は、冒頭で申しましたデータベース化の作業と並行いたしまして、このような情報も把握をすることとし、県、県有財産有効活用検討委員会の中での検討について検討するという方向にいたします。また、国や市町村の情報提供のあり方についてもあわせて検討していきたいと考えておるところでございます。以上でございます。
(教育長)
施設管理に関しますデータベースの作成状況についてお答えをいたします。
現在、県立学校の施設管理につきましては、財産管理台帳などをベースに、各学校の施設の状況をパソコンで簡易ではございますが、いわゆるデータベースとして一括管理をしているところであります。このデータベースをどう拡充をして活用をしていくかということにつきましては、各種研修会等への職員の派遣でありますとか、あるいは先進事例の調査、こういったことを行ってる状況でございます。その際、県立の学校施設につきましては、一般の行政庁舎よりもエレベーター等設備が少ないということ、あるいは現在、本庁で一元的に状況を確認をいたしまして、優先度や緊急度を判断した修繕や改修を行っております。こういった状況も踏まえながら、先ほどのデータベースの拡充、あるいは内容、活用範囲の拡大、こういったことについて、引き続き考えてまいります。
いずれにいたしましても、中長期的な視点に立ちました改修、あるいは計画的な施設の長寿命化、これらは大変重要なことと認識しておりますので、そうしたことも踏まえながら、検討を進めてまいります。以上でございます。
(警察本部長)
警察におけます施設管理に関するデータベースの作成の進捗状況につきましてお答えをいたします。
県警察におきましては、主要庁舎及び職員宿舎の施設保全情報を記録した保全管理台帳の整備を進めておりましたが、9月末をもって完了の予定でございます。また、施設保全情報のデータベース化につきましては、知事部局が導入している保全情報システムを活用し、平成25年度から入力することとしております。以上です。
(かもと)
県有施設管理については非常に前向きな御答弁をいただいております。データベースのつくり方については、いろんな手法があろうかと思っております。大切なのは、施設をどうやって適切、有効に経営、管理をしていくかということでございますので、その辺は三者とも同じだというふうに考えておりますので、適切な管理をいただけたらというふうに思います。
先日、FM研修というファシリティー・マネジメント研修というものに参加させていただきました。赤松部長を筆頭に、各県の団体、あるいは教育委員会、警察本部の皆様方が集まられて、市町村の皆さんも来られておられました。その中で、熱心な講習と質問が飛び交ったわけでございますが、これをこれからも続けていただいて、私の個人としては、教育委員会、そして警察本部の皆様もたくさん御参加いただきまして、この活動が、FM活動、あるいは県有施設の管理が全員参加のもとに成功裏に行われますことを祈念して、意見として申し上げさせていただきます。以上でございます。
以上