2016/04/01 12:17:06 テーマ:議会
平成24年(2012年)11月定例会(一般質問)
【主な質問テーマ】
〇原子力防災訓練について
〇島根原子力発電所をめぐる島根県、鳥取県の周辺首長との意見交換会について
〇小中高のキャリア教育について
〇小中高における英語教育について
1.平成25年1月に行われる原子力防災訓練について
〇来年1月に行う予定の原子力防災訓練の目的は何か
(かもと)
前回の9月定例会におきまして、私は原子力災害に関連する広域避難計画について質問をいたしました。私の質問に対して知事は、計画に基づいた避難の訓練をすることが大事だ、ことし2月の原子力防災訓練においては、松江市だけではなく出雲、雲南、安来市、周辺の鳥取県、境港、米子市などとも一緒になって県、市、警察、消防など防災機関の初動対応の訓練、行政だけの訓練をしたこと、来年の1月には、行政だけでなく住民の方々にも参加いただく実動訓練を実施するということで準備中であること、こうした訓練を繰り返し実施して、実効性のある防災体制の確立に努めていきたいという御答弁でございました。私も住民参加の実動訓練が大変重要だと考えております。
そこで最初に、来年1月に行う予定の原子力防災訓練の目的は何か、知事に伺います。
(知事)
嘉本議員の御質問にお答えをいたします。
私からは、原子力防災訓練の目的と、鳥取あるいは周辺市との意見交換会に関連した質問についてお答えをいたします。
原発につきましては、やはり原発自身の安全確保ということが最も大事な課題でございます。しかし、万が一のことも起こり得るわけでありますから、そのために防災対策、訓練等をしなければならないという関係に立つわけでありますけども、万が一の場合に備えて放射性物質がどのように飛散するか、そういうモニターを整備をしたり、あるいは行政機関の中でいろんな連携をとらなければなりませんから、そういう連携網の機械等の施設整備と申しますか、そういうことがあるわけであります。あるいは避難道路の整備といったものも、そういうインフラの整備ということで関連をすると思います。
もう一つは、やはり住民の方々が避難をする、ふだん通常の場合ないことでありますから、いろんな知識を持ち、避難の仕方などを経験をされるということが大事でございます。それで避難訓練を行うわけであります。
それから、避難をするためには一定の計画が必要であります。市全体をカバーする計画、あるいは30キロ圏域の市全体としてどうするかという計画もつくると、こういういろんなことがあって、そういう一つとして訓練を行うということであります。
昨年度におきましては、福島原発事故を受けまして、ことしの2月になりますけども、避難訓練を行ったわけです。それは議員御紹介になりましたように、従来は松江市とこの県とということでございましたが、松江市以外に鳥取県、そして島根では出雲市、雲南市、安来市、鳥取県では米子市、境港市の行政機関も加わりまして訓練をしたと、こういうことでございます。この参加した方々は県の職員であり、市の職員であり、あるいは警察、消防などの防災関係の行政機関でありまして、初動態勢をどうするかということをまず中心に訓練をしたということであります。
その後、避難計画自身についてのいろんな作業が進んでまいりまして、30キロ圏域にかかる島根県では4市が広域避難計画をつくるということをやって、大きな枠組みができましたので、先般公表したと。この計画もまだまだ細部を詰めていったり、国の協力を求めなきゃいかん分野がたくさんあると、こういう状況であります。
そこで、訓練につきましては、その避難計画なども念頭に入れまして、来年の1月に行うと、こういうことにしておるわけです。内容としましては、住民の方々が参加して行われる実動避難訓練、それから30キロ圏外の避難先での避難所運営訓練など新たに盛り込んで行うわけであります。
目的は、やや抽象的になりますが、3つ掲げております。1つは、原子力災害発生時における県、市、警察、消防など防災機関相互の連携による防災対策の確立と、こういうことです。確立に向けての訓練と、こういうことです。第2に、防災業務関係者の防災技術の習熟をさらに進めると。第3に、住民の方々あるいは学校等の参加による原子力災害発生時の避難方法の習得、あるいは原子力防災に対する理解の向上などを目的として行います。
もちろん、こうした目的は今回の訓練だけで対応できるわけではありませんし、住民の方々の参加も一部でありますから、さらにこうした訓練を続けていかなければならないというふうに思っているところでございますし、また議員も御指摘になりましたけども、事故の対応によってもいろんな違いが出てくるわけです。あるいは時刻によって夜中であるとか朝方であるとか、あるいは雨が降っているとか雪が降っているとか、いろんな対応がありますが、そういうものはこれから先、そういう場合にどうするかということもよく考えて、訓練などにも取り入れていく必要もあろうかと思いますが、現時点では今申し上げたようなことであります。
〇原子力防災訓練の具体的項目と特徴は
(かもと)
先月10月28日に佐賀県玄海町の九州電力玄海原発で、東京電力福島第一原発事故級の事故が発生したことを想定した原子力防災訓練が佐賀県、福岡県、長崎県の合同で行われました。関係機関との連携強化や住民の意識向上が目的で、福岡、佐賀では福祉施設のお年寄りや保育園児を含む住民計1,700人が避難訓練に参加されたということでございます。3県の職員は佐賀県庁に集まり、国の避難指示などを地元自治体に伝える手順を確認したり、放射線量の計測や医療機関と連携して救護所を設け、住民の被曝検査や除染したりする訓練が行われました。
住民の避難訓練は30キロ圏にある福岡県糸島市と佐賀県の玄海町、唐津市、伊万里市の4市町で実施され、それぞれの県内において子どもたちやお年寄りの誘導方法や、ペットを連れ自家用車で避難する人への対応が確かめられたそうであります。
新聞報道によれば、現段階でも防災訓練によってさまざまな課題が出ているようでございます。避難訓練について言えば、例えば県境を越えた避難支援の詳細な確認の必要性、策定した避難ルートの再検討、離島があるという地域的特性から、天候を考慮に入れた船による避難のシナリオづくりと臨機応変の対応、乳児の避難の対応、乳幼児と保護者との連絡体制の確立、施設入居者の移動において地域の住民も含めた協力体制の見直し、独居老人、聴覚障がい者、視覚障がい者の移動や対応、モニタリングポストの操作方法の職員への普及、拡大、夜間の訓練の必要性、避難所での生活の仕方についての手引の必要性などが課題として挙がっております。
また、先月10月24日には、北海道電力泊原発事故から30キロ圏の緊急防護措置を準備する区域にある後志管内の13町村が参加する中で、北海道の原子力防災訓練が行われました。避難対象地域の人口約7万8,000人の1割近い約6,000人が参加する大規模なものでした。このうち、住民は約1,700人がヘリコプターや船、バス、JRなどさまざまな移動手段で30キロ圏外へ避難しました。ここでも積雪を前提とした厳冬期の訓練、除雪のあり方、交通手段の選択肢を増加すること、放射線に対する基礎知識の普及、情報伝達する場合の住民が理解しやすい言葉の選択、保護者との連絡のとり方などが課題として挙がっているようであります。これから全国において原子力防災訓練が重ねられるごとに、原子力防災の準備が進んでいくことと思います。
そこで、来年1月に行われる原子力防災訓練の具体的な訓練の項目と内容、参加機関、参加対象者、規模について伺います。
また、計画されているたくさんの具体的訓練の中で、特に今回力を入れる訓練があろうかと思いますが、原子力防災訓練の特徴は何か伺います。
(総務部長)
私のほうからは、1月に予定をしております原子力防災訓練の項目と、若干具体的な内容についてお答えをさせていただきます。
御質問に対する順序が前後いたしますが、まず訓練の特徴ということについてから御答弁をさせていただきます。
知事が答弁いたしました訓練の目的ということと重なる部分があるわけでございますが、今年度予定をいたしております訓練は、さきに取りまとめた広域避難計画に基づき行う初めての訓練であるということでございます。特定の側面でありますとか場面に特化、重点的に何か行うというような発想ではなしに、島根原発でのトラブル発生から各種防災機関の通信連絡など初動の対応、オフサイトセンターの立ち上げ、あるいは一般住民や学校などの避難開始から終了に至るまでの一連の流れを、一般住民の方々の参加を得て関係機関が連携し実践し、検証をしていくというふうなものであるというふうに考えてございます。
次に、具体的な訓練の項目でございますが、初動対応訓練といたしまして、原子力災害発生時におけます各防災機関の対応手順の確認でございますとか、通信連絡訓練などを考えておるところでございます。
また、オフサイトセンターの設置運営訓練でございますが、各機関からの要員の派遣、あるいは島根県と鳥取県の災害対策本部のテレビ会議システムを用いた情報伝達訓練などを行うことにしておるところでございます。
次に、避難指示が発令された場合の避難の訓練を実施をすることとしてございます。一般住民を対象とした訓練でございますが、これは30キロ圏内の6市がそれぞれで実施をするということにしておりまして、屋内退避指示の情報伝達の訓練、あるいは屋内退避の訓練というのを行うとともに、30キロ圏外への避難訓練の実施ということも考えておるところでございます。
また、学校でございますとか災害時の要援護者には特別な配慮が必要でございますので、今回は学校と社会福祉施設を対象に訓練を別途行うということにしておるところでございます。
まず、学校の訓練でございますが、防災無線等を活用いたしました緊急時の通信の連絡、児童等の屋内退避あるいはバスによる避難訓練、社会福祉施設、これは入所施設を想定してございますが、この訓練では、まず施設内での情報共有、家族の方々への連絡、入所者の方々の施設から避難車両までの誘導というようなものを行うこととしておるところでございます。
次に、避難中における交通規制の訓練でございますが、避難車両の交通誘導を検討をしておるところでございます。また、避難後におけるものでございますが、1つ目といたしまして、自衛隊災害派遣運用訓練といたしまして、避難所における炊き出し支援でございますとか、避難者あるいは避難車両に対する除染活動というような訓練を行いたいと考えてございます。
また、医療活動訓練でございますが、避難住民の方々のスクリーニング検査というような項目についても考えておるところでございます。
また、一連の避難措置を検討する前提と申しますか、検討する際には、必要な放射線の情報というようなものを得ていく必要がございます。緊急時のモニタリング訓練も予定をしておるところでございまして、内容でございますが、30キロ圏内での空間線量の測定でございますとか、鳥取県との情報伝達共有というようなことなどを考えておるところでございます。
参加機関でございますが、島根、鳥取両県、30キロ圏内の6市、警察、消防のほか自衛隊などの国の機関、学校、福祉施設などを予定をしておるところでございます。
参加対象者でございますが、参加機関職員に加えまして、一般住民の方でございますとか児童生徒というようなところも予定をしておるところでございます。
規模というような点でございますが、参加機関でございますとか参加対象者を含めまして、年内をめどに現在調整をしておるというふうな状況にございます。
〇原子力防災訓練の検証方法は
(かもと)
防災訓練の目的は、訓練を筋書きどおりに整然と終えることではありません。防災訓練結果を隅々まで検証して不備を洗い出し、その不備を改善、解決することが何よりも大切だと考えます。その意味で、常に防災訓練後に検証をすることが重要だと考えますが、どのように行う予定か伺います。
行政、参加機関内部だけではなく、参加団体、住民の皆様との意見交換による検証も大事と考えますが、所見をお伺いいたします。
(総務部長)
続きまして、訓練の検証というようなことについての御質問でございますが、今回の訓練の評価、検証につきましては、訓練参加者によるものと第三者機関によるものという、2つの方向から検証を行うというふうな考えでございます。
1点目の参加者によるものでございますけれども、これについてはアンケート調査を実施をいたしますとともに、御指摘ございました参加団体でございますとか、参加をいただいた住民の皆さんからの意見を伺うというような方法についても、検討していきたいと考えておるところでございます。
また、第三者機関によるものについては、公益財団法人の原子力安全技術センターでございますとか、独立行政法人の原子力安全基盤機構による訓練の評価を予定をしておるところでございます。
このような訓練の検証でございますとか、御指摘ございました他県における事例というようなものを、今後の避難計画でございますとか防災訓練の内容にフィードバックをしていきたいというふうに考えておるところでございます。以上でございます。
2.島根原子力発電所をめぐる島根県、鳥取県の周辺首長との意見交換会について
〇意見交換会の内容と所感は
(かもと)
次に、島根原子力発電所をめぐる島根県内首長、鳥取県と米子市、境港市首長との意見交換会について伺います。
原子力災害が万が一起こった場合は、甚大な影響を受ける可能性を共有する自治体の皆さんが同じテーブルに着くことは、大変意義深いものがあると考えます。
島根原子力発電所をめぐる諸課題等についての意見交換をするために、去る10月29日に島根県知事と原子力発電所周辺3市、出雲市、安来市、雲南市の市長との間で、そして11月1日に島根県知事と鳥取県、米子市、境港市の市長との間で意見交換会が行われたということでございます。意見交換会ではどのようなことが話し合われたか、知事にお伺いいたします。
また、それについての知事の所感と、それに関連して今後島根原子力発電所をめぐる諸課題等についてどのように取り組んでいく意向か、知事にお伺いいたします。
(知事)
先般出雲市、安来市、雲南市の市長、そして別の場でありますが、鳥取県の知事、米子市、境港市の市長と意見交換をいたしました。その意見交換ではどんなことが話されたのかということと、それについての所感についての御質問であります。
県内3市、それから鳥取県、鳥取県の2市、私どもとも意見交換したいという希望は持っておられまして、私どものほうも9月でございましたか、原子力規制委員会ができまして、原子力安全に対する体制が変わったわけでございます。そこで、どういうふうな方向で物事が進んでいくのか、まだはっきりしない点がございましたので、タイミングを見ておりましたけども、10月29日に出雲市、安来市、雲南市と会合し、11月1日に鳥取県知事、米子市長、境港市長と意見交換を行ったと、こういうことでございます。私どものほうから国の機関、原子力規制委員会、そして経産省の資源エネルギー庁などがどういう方向で安全対策、安全基準を対応しようとしているか、我々一定の情報を持っておりますから、そういう情報を提供して御意見を伺うというのが1つであります。
そして、そういう中では政府の対応がはっきりしないものもたくさんありますから、そういうものにつきましては、共同してできるものについてはまた政府にも一緒に申し入れていくとか、あるいは個別にやるということもありますが、そういうことを行ったということ、それから避難訓練、避難計画などの作成も鳥取県でも行っていますし、我がほうでも行っていますから、そういう点について意見交換をしたということであります。
広域避難計画につきましては、避難先あるいは避難の手順など、あらかじめ定めておくことが重要だということは、もう異論のないことでありまして、さらに実効性を高めていくようにいろんな訓練、積み重ねが必要だということでありました。
また、避難所の運営でありますとか、スクリーニングでありますとか、あるいは要援護者の避難などにつきましては、これはやはり国によく申し入れていきませんと、我々だけでは解決できませんので、そういう点をやっていこうというようなことで、大体同じような認識を持っておられるというふうに思います。
次に、これらの島根の3市、鳥取県、そして鳥取の2市におかれましては、中電との関係で原子力の安全協定があるけども、それを松江市あるいは県の場合と同じように、稼働等について大きな変更等がある場合には、事前の了解を得るという規定がありますが、周辺市等につきましてはないわけでありまして、そういう点については以前から鳥取県関係周辺市は言っておられることはよく承知をして、私も平井さんからとか、あるいは県内周辺3市長さんからもお聞きはよくしておりました。
その点は私のほうも国に対しましては、中電は電力事業者の一つですから、電力業界全体がどうかということがないと、なかなか中電だけでこうするというわけにいきませんし、電力業界がやはり国とよく話をしなきゃいけませんし、電力業界は国の電力事業法に基づいて事業をやっている法人ですから、それはやはり国がどうするということがやっぱり大事なわけであります。そういう意味で、規制委員会でありますとか、当時は保安院がまだありましたけども、保安院に対しまして国がこうした問題にどう考えるか、関与してやる必要があるということをずっと言っております。しかし、国のほうは体制がまだ整ってないという状況ですということを説明をしてあります。そんな状況でございます。
それから、意見交換の所感でありますが、先ほど申し上げましたように、率直な意見交換によってでありますけども、避難の計画、方法等の進む道につきましては、意見の違いは余りなかったと思います。その方向で協力を強化していく、こういう場でいろんな意見を聞きながら対応していくということが大事だというふうに思っています。
そして、それに関連をしまして、議員の御質問は、島根原発をめぐる諸課題への取り組みいかんと、こういうことでありますが、先ほど申し上げましたように、やはり一番大事なことは、新たにできました原子力規制委員会が安全基準を確立をし、それに基づいて安全対策を決められて、それを個々の原発についてチェックをして、必要な改善があるならある、こういうところがあるということがまず進むということが一番大きな課題です。それはまだ基準もまだ対策の案もできてないわけであります。まだまだ時間がかかる、いろんな報道等から見ますと状況にあるように思います。しかし、こういう問題に対しましても、よく必要な意見等は我々自身も言っていかなければならないというふうに思います。
それから、もう一つの問題は、万が一の場合に避難というものをどうするのか、先ほど申し上げましたように、訓練でありますとか各地域で広域の避難計画をつくる、それをさらにエラボレートしていく、さらに訓練などを通じて住民の方々の知識、体験がふえる、そういうことをやっていかなければならないというふうに思いますし、要援護者などにつきましては、国が、例えば自衛隊が出動しないと円滑にできないといったようなことは福島でもありますから、やり方はある程度わかって、国においてもわかっておりますけども、そういうマニュアルのようなものを、どこに申し込んでどうするといったようなものを国がおつくりになることが必要だということを言っておりますが、まだ進んでおりません。
あるいは、避難先でいろんな運営の仕方、物資の調達あるいはとりあえずの経費の負担の仕方、いろいろあろうかと思いますが、そういうものについてもやはり国の対応が必要であります。そういう点をさらに進めていくといったようなことを、いろんな課題がございます。私どもとしては、島根県、そして鳥取県、関係市の意見をお聞きするとともに、全国知事会あるいは原発立地13道県で組織する原発協がございますので、そういうことを通じて意見を国によく申し入れていきたいというふうに考えておるところであります。
3.小中高のキャリア教育について
〇島根県の小中高のキャリア教育の目指すところは何か
(かもと)
次に、小学校、中学校、高等学校におけるキャリア教育について伺います。
キャリア教育については、池田議員、岩田議員など、さまざまな視点から熱心な質問が過去にされておりますが、私としては3つに絞って質問させていただきます。
小中高等学校の児童生徒たちが自分の好きな仕事、憧れの仕事、あるいは今まで考えもつかなかった仕事を学んだり体験したりすることによって、社会と仕事がどのようにかかわっているか、その中で自分の人生にとって仕事とはどういう意味を持つのか、仕事の厳しさや仕事をするために必要な技術、技能、知識、協調性、忍耐力、今なぜ自分が勉強しなければならないかなどということについて真剣に考えていくことは、大変大切なことであります。キャリア教育により自分の進路がより明確にされ、動機づけがしっかりし、それが学力向上あるいは技術や技能の習得にもつながるということは、経験的にも明らかであるように思います。ましてや、今仕事で求められる技術、技能、専門知識などはどんどん高度化しており、これからも高度化し続けることが予想される中で、キャリア教育はますます重要になってくると思います。
また、地域全体でキャリア教育を行うことにより、地域での就職の可能性も高くなり、そうした小中高等学校で養成した能力が地域の企業などの就職先に生かされ、地域の発展につながるということもあるでしょう。厳しい経済情勢の中で、若年無業者の問題、不安定な仕事への就職、仕事と個人のマッチングなどの問題の解消について、キャリア教育が果たす役割も大きいと思います。
また、自己実現などとも言われますが、仕事を通じてみずからが理想とするところを追い求め、それが個人としての満足、幸せにつながっていくということもキャリア教育の効用の一つであると考えます。そのためにも、児童や生徒の学校生活、地域生活、家庭生活、社会生活の中においてキャリア教育が根づいていかなければならないと考えます。
また、キャリア教育は幼児期における挨拶などのしつけ、親子の会話や手伝いなどに始まり、義務教育の段階から体系的に各学校段階の取り組みを考えていくことが重要だと考えますが、島根県の小中高等学校のキャリア教育においてそれぞれ目指すところを教育長に、それが何かということを伺います。
(教育長)
1点目のキャリア教育についてでございます。
まず、小中高のキャリア教育において、それぞれ目指すところは何かという御質問でございます。
小学校ではふるさと教育やふるまい向上などを通して、ふるさとへの愛着、誇りを醸成し、社会人としての基礎的な力を養うこと、それから中学校では職場体験や外部人材の講話などを通し、社会人に必要な能力を育成することを目指しております。また、高校では地域社会や産業界、関係機関との連携をしたインターンシップや課題研究など、さまざまな教育活動を通しまして地域や職業を理解し、社会人、職業人として必要となる能力や態度を育てるということと、それから将来の島根を支える気概を持ち続ける生徒を育成する、こういったことを目指しております。
〇キャリア教育の推進体制は
(かもと)
さらに、小中高等学校において有効なキャリア教育を行っていくためには、キャリア教育の企画、実施、チェック、改善のそれぞれの段階において、学校、教育委員会を中心として商工団体、農業団体、地域の経営者などの産業界、福祉団体、NPO、PTAなど地域全体で取り組む必要があると考えます。市町村、県レベルにおいてどのような推進体制をとっているか、お伺いいたします。
(教育長)
それから、2点目でございます。小中高において有効なキャリア教育を進めるための推進体制についてでございます。
現在、県内で市町村で取り組まれているいい事例といたしまして、雲南市の取り組みがございます。雲南市では、市としてのキャリア教育の目標を設定いたしますとともに、学校、保護者、地域、企業などの連携をスムーズに行うためにコーディネーターを各中学校に配置をいたしまして、キャリア教育を市全体で推進をいたしております。
また、今年度から浜田市におきまして、小中学校が連携したキャリア教育推進のモデル事業、こういった事業が実施をされております。こうした取り組みが今後県内で広がることを期待をいたしているところであります。
それから、高校でございますが、キャリア教育担当者を各高校に配置をいたしまして、企業や地域と連携をしながらキャリア教育を推進しているところでございます。
〇キャリア教育の今後の課題は
(かもと)
最後に、島根県においてはキャリア教育について、今後の課題をどのように捉えておられるか伺います。
(教育長)
それから、3点目でございます。キャリア教育の課題ということでありますが、3点ございます。
1点目が、小学校、中学校、高校と12年間にわたります継続的で一貫したキャリア教育を進めるために、学校種間の連携を図っていくこと、それから2点目が、学校が家庭や地域、企業などの理解と協力を得て互いに連携をしながら、子どもたちの各発達段階で効果的なキャリア教育を推進していくこと、それから3点目でありますが、何よりも教員のキャリア教育に対する理解の促進と指導力の向上を図る、こういった3点が大きな課題だと思っております。
4.小中高における英語教育について
〇島根県の小中高の英語教育の目指すところは何か
(かもと)
4番目に、小学校、中学校、高等学校における英語教育について伺います。
我が国の教育基本法においては、第1条に、教育は人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならないと記されております。要するに、知徳体のバランスのとれた個人、公の中の個人としての確立を目指しているものと言えると私は思います。
申し上げるまでもなく、小学校、中学校、高等学校の教育は言語活動を通して行われ、その言語に関する能力を育成する中核的な役割を果たすのが国語、日本語であります。一方で、国家間の人、物、金、情報の動きが加速的に活発化している21世紀社会において、外国語の習得も大変重要であります。
島根県の企業が海外に進出し、技術、技能指導するケースも出てきておりますし、これからは外国の企業が島根県に進出することも考えられます。いまだに人数としては少ないにしても、外国からの観光客を島根県に積極的に誘致するということも、島根県の政策課題であります。
県内に滞在する外国人の数もふえております。外国人登録者数を見ますと、1990年12月末におきまして2,000人だったものが、2011年12月末現在で5,425人となり、この約20年間で2.5倍に増加しております。中国、ブラジル、韓国、フィリピン、アメリカなど58カ国と国籍の多様化も進んでおります。
また、家庭においては、コンピューターを通して世界中に接続しております。外国語によるホームページ数は日本語のそれよりも圧倒的に多く、テレビでもさまざまな外国語による番組が放映されています。印刷された本も日本語よりも外国語のものが圧倒的に多く、外国語を習得している場合とそうでない場合の情報格差は明らかであります。
世界にはさまざまな外国語があり、意思疎通をする手段としてはそれぞれ重要でございますが、英語が国際共通語として中心的な役割を担っている点に鑑みれば、英語の習得が大変重要な課題であります。
しかしながら、日本の英語教育の到達レベルを世界の物差しと比べてみますと、大変心もとない状況にあります。英語力の到達度をはかる物差しの代表的なものがTOEFLでございます。TOEFLは世界130カ国以上の国の大学や大学院などの入学試験の判断基準などに採用されている、母国語を英語としない学生の皆さんなどが受験する英語のテストです。中でもTOEFLiBTは聞くこと、話すこと、読むこと、書くことという4つの総合能力を測定する試験でございます。
2011年1月から12月までに行われましたTOEFLのテストとスコアデータの報告書から抽出した、TOEFL基準による国別のTOEFLiBTのスコアの平均を上から見てみますと、試験の平均の値が出ている163カ国中、オランダが第1位、第2位がシンガポール、第3位がオーストリア、ベルギー、デンマーク、第6位がスイス、第7位がフィンランド、ドイツ、ポルトガルとなっております。近隣の韓国と香港は大分下がって、ともに70位、中国は102位、肝心の日本は137位でございます。これは直近の数値でございますが、こうした状況は以前から国内外において指摘されていたことでございます。これらを踏まえて、我が国では英語教育についてさまざまな議論が重ねられてまいりました。
平成20年1月に中央教育審議会が「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について」という答申を出し、それを受けて文部科学省が学習指導要領をそれぞれ改定し、その結果、平成23年4月から小学校5年生、6年生において外国語活動が導入されました。また、平成24年4月から、中学校においては学ぶ語数を900語から1,200語に増加し、聞くこと、話すこと、読むこと、書くことの4技能をバランスよく育成するための授業が行われております。さらに、来年、平成25年4月からは、高等学校において英語による授業が導入されることとされ、指導する標準的な単語数が1,300語から1,800語に増加されることになりました。
こういった動きなどを踏まえて、島根県の小中高等学校の英語教育においてそれぞれ目指すところは何か、教育長にお伺いいたします。
(教育長)
それから、大きい2点目の英語教育について、5点ほど御質問をいただきました。
まず、1点目でございます。小中高等学校におきます英語教育の目指すところは何かということでございます。
小学校では、外国語の音声や基本的な表現になれ親しませながら、コミュニケーション能力の素地を養うこと、それから中学校では、聞く、話す、読む、書くなどのコミュニケーション能力の基礎を養うこと、また高等学校では、情報や考えなどを的確に理解したり適切に伝えたりするコミュニケーション能力を養うこと、こういったところがそれぞれ目指すところでございます。
〇小中高の英語教育の具体的な取り組みと新しい取り組みは
(かもと)
日本の小中高等学校の英語教育におきましては、さまざまな教材を用いたり工夫が施された授業が行われたりしています。英語指導助手、これからはALTと便宜上呼ばせていただきますが、このALTの活用も一つでございます。
さて、小中高等学校、また学校によりALTの仕事は異なるということですが、英語の授業、英語活動、教材作成の補助、特別活動や部活動、地域における国際交流活動の協力などが仕事の主な内容になるということでございます。母国語を英語とするALTの活用の仕方によっては、児童や生徒たちの英語力向上、国際理解向上などに大きく寄与すると考えます。
しかしながら、英語の授業においてALTを十分に活用しているかというと疑問が残ります。私が過去に直接会ってお話を伺った県内のALTは10人を超えると思いますが、それによると、もっとたくさんの時間、生徒の指導に携わりたい、自分が授業のために有効に使われていない、そして時間的な余裕もあるというような意見が多かったように思います。
ことしの9月に、語学指導等を行う外国青年招致事業を通じて派遣されているALTの皆さんが、オンラインアンケートにより実施された調査の報告書がございます。45の都道府県に在住する399名のALTと民間ALTの1名が回答したもので、内訳は約50%が小学校、58%が中学校、43%が高等学校に勤めておられるということでございます。そして、市町村に所属しているALTが54%、都道府県に所属しているALTが46%ということでございます。
1週間の授業時間の平均について、回答者の33%が11から15時間と答えております。また、仮に週平均35時間の勤務だとすると、ALTの約5人に1人が勤務時間における授業時間の割合が30%以下ということでございます。また、授業の計画にかける時間を見ますと、全体の51%が週5時間以下、30%が6時間から10時間、11%が11から15時間と回答しておられます。どれぐらいの時間を授業中に過ごすのが適当かは議論の余地があるでしょうが、私のヒアリングとあわせて見ると、やはり時間的に言ってもさらに多くALTの活用がなされてもよいのではないかと思われます。
一人一人の児童生徒にとってみれば、週におよそ1回程度ALT補助のもとで授業を行っているという理解をしておりますが、やはりしっかりとした学習をしようと思えば、少なくとも週に2回はALT補助のもとでの授業が必要とも考えます。授業以外でもイベントや部活動などの活用も必要でしょう。
そこで、伺います。
島根県においてもALTの活用や増員に限らず、英語教員の増員、さまざまな授業方法、教材の選択などにおいて改善のための検討を重ねておられると思いますが、島根県の英語教育において目指すところを達成するために、小中高等学校における英語教育をどのように具体的に実施しておられるか、そして新たな取り組みはあるか伺います。
(教育長)
それから、2点目でございますが、英語教育を今どういうふうに実施しているか、それから新たな取り組みがあるかという御質問でございます。
大きく2点ございまして、1つが教員の指導力の向上でございます。その中で、英語教育を新たに導入をされました小学校教員につきまして、外国語活動の研修を始めておりますし、それから中高の英語化につきましては、リーダー養成の研修を行ってきているところでございます。
それから、2番目の指導方法の充実でございますが、1つが少人数指導の実施ということで、中学校では約6割の学校でこれが実施をされております。高等学校では英語の少人数指導を行うための加配ということで、15名を配置をいたしております。
それから、指導方法の充実のもう一点でございますが、御質問にもございました外国語指導助手を配置をいたしております。市町村で59名、県立学校で17名が配置をされております。活動ですが、中学校では現在週1.5回程度、それから高等学校では週1回程度ということでございまして、御質問にございましたこのALTのもう少し効率的な活動というのが必要かなということを思っております。
それから、新たな取り組みでございますが、今年度英語力を強化するための指導方法の改善のモデル事業、こういった事業を浜田高校を拠点に展開をいたしております。今後研修会を開きまして、その取り組みを各高等学校へ周知を図ってまいりたいというふうに考えております。
〇目標設定とその達成状況は
(かもと)
新たに改訂になった学習指導要領には、児童生徒の英語力の到達レベルについての具体的な数値目標が書かれておりません。文部科学省では、平成22年11月に外国語能力の向上に関する検討会を設置し、生徒の外国語能力の向上のため、目標設定のあり方を始め指導方法、教材のあり方などの方策について検討を進め、「国際共通語としての英語力向上のための5つの提言と具体的施策~英語を学ぶ意欲と使う機会の充実を通じた確かなコミュニケーション能力の育成に向けて~」という報告書をまとめて、平成23年7月に文部科学省より発表されました。
その提言の第1番目に、生徒に求められる英語力について、その達成状況を把握、検証するが挙げられ、積極的に英検やGTEC for STUDENTS等の外部検定試験を活用し、実際に生徒の英語力を把握、検証することが必要であるとしています。
私も客観的な尺度により生徒の学習の進捗状況を把握、検証することは大事だと思います。例えば、外部試験であればどれだけの児童や生徒がどのレベルの試験を受けているか、その合格率などが考えられると思います。
目標設定、達成状況の評価への外部試験の導入については、平成21年2月定例会において、岡本議員の質問に対して当時の教育長が、英語検定などのような資格の取得は生徒にとって目標となり、また励みともなる。受験料の負担を伴うが、できるだけそうした目標を掲げさせて、生徒の英語力を高めることにつながるようにしていきたいと考えているという趣旨の答弁があったところでございます。
そこで、伺います。
島根県においては、小中高における英語教育の目標設定をどのようにしているか、またその達成状況はどうか伺います。
(教育長)
それから、英語教育3点目でございます。英語教育の目標設定、それからその達成状況がどうかという御質問でございます。
英語教育につきましては、数値による目標設定というのは大変難しいということから、各学校ではそういった数値目標の設定は行っていないと承知をいたしております。そうした中で例えば中学校でございますが、県の学力調査を活用いたしまして、前年度の調査で明らかになりました課題を解決すると、こういったことを大きな目標としているというふうに伺っております。
それから、高等学校におきましては、現在各学校に対しまして新学習指導要領の考え方に基づきまして、来年度から学習到達目標、これも数値目標ということではなくて、読み、書き、聞く、話す、こういったことについて定性的な評価、目標でございます。そういった目標を設定をいたしまして、その達成状況を把握、検証するよう、こういった指導を現在行っているところでございます。
それから、御質問にもございました外部試験を活用した目標設定ということですが、現在はそういった目標設定を行っている学校はございません。ただ、島根県の中学校、高等学校の多くでは実用英語の技能検定の試験が行われております。受験する生徒の割合ですが、全国平均を残念ながら下回っておりますが、合格率は全国平均を上回るという状況にございます。
この検定ですが、検定日が全国一斉の日にちで決められているということ、それから経済的な負担と、こういったことで全ての生徒が受験するということは困難でございますが、生徒の英語学習の目標や励みとなります。また、英語力の伸長を図る手段の一つとして有効であると思っております。できるだけ多くの生徒に受験をしてもらいたいと考えているところでございます。
〇今後の課題は
(かもと)
また、小中高等学校の島根県の英語教育について、今後の課題についてどのように認識しているか伺います。
(教育長)
それから、今後の英語教育の課題ということでございますが、中学校につきましては、県の学力調査の結果を見ますと、例えば長い英文の内容や要旨を理解する力の育成、それから英語が役に立つ、楽しいと、こういう実感を持たせる、こういったことが課題ではないかと考えております。
それから、高等学校におきましては、今後新学習指導要領によりまして英語の授業を英語で行うということが基本となりますが、これに伴いまして教員の負担感あるいは生徒の学力に差異がある、こういったことが大きな課題ではないかなと思っております。今後も研修などを通じまして、教員の指導力の向上などに努めていきたいと思っております。
また、先ほど申し上げました外国語指導助手の効率的な運用、こういったことについても意を用いていく必要があるというふうに考えております。
〇英語教育に米国のキャリア教育のインターネット上の教材などの活用を
(かもと)
私の身の回りにいる子どもたちを見たときに、それぞれ程度の差こそあれ、職場体験を通じて、将来自分がつきたい仕事について興味や関心を持っている子がふえたなと実感しております。外国においてもキャリア教育が行われており、特に米国ではキャリア教育に熱心でございます。米国の子どもたちがいかにして仕事について学んでいるか、日本の子どもたちも興味や関心を持つと思います。
米国でのキャリア教育の内容は、テキストやビデオなどインターネット上に多数あり、全て英語でございます。米国の若者がさまざまな職業について現場で仕事をしたり経験したりしている様子を紹介したビデオ、例えばユーチューブのジョブシャドウイングなどやテキスト形式の教材、ACTなどがあります。キャリア教育の教材を英語を通して学ぶことにより、進路も英語も学べるという一石二鳥のチャンスではないかと思います。
島根県において、米国のキャリア教育のインターネット上の教材、データベースを英語教育の一部として活用することはできないか、教育長にお伺いいたします。
(教育長)
最後に、インターネットにおきます教材データベース、これを活用したらどうかという御質問でございます。
私どもも今後インターネットの活用など、ICTを英語教育の中に効果的に取り入れ、生徒の発達段階、それから興味、関心に即して適切な題材を取り上げるなどいたしまして、生徒の学習意欲を高める指導が行われるように努めてまいりたいと考えております。以上でございます。